蘇った!ペンタの蹴球日記

あの世から蘇ってきた蹴球老人の日記

生き延びれるのか?

バルセロナを旅行したあの年に抱えることになった負債を、ほほ返せる見通しがたったこの年の瀬である。

 

やれやれ、わしは生き延びたのじゃ!

 

じゃが、これから1月末までに80頁の本を2冊執筆・編集しなくちゃならんのに、まったく図面や原稿も仕上がる予定がたっておらん・・・いったいどうなるのじゃ?

 

しかも、11月から続くパソコントラブル。わしはKMまっしぐら並みにクラクラしながら年末を迎えた。じゃが、どうやら今日一日で、パソコン関係のトラブルは収まったようだ(ただし一部携帯のメールは不通のまま。こちらから連絡しても受信キャンセルされる)。

 

じゃが、なにやらほっとしたのか、どっと疲れが出たようで、やたら眠いのである。

 

どっこい生きてるペンタじゃぞーい!

 

☆     ☆     ☆

 

さて、アーセナルサウサンプトンを見た。レスターが負けたことにより、このホームでのゲームに勝てば今季初の首位に踊り出るはずだったアーセナル。従来のポゼッション重視、パスサッカーから、少しカウンター志向を強めたそうで、それが奏功して最近好調であった。

 

このチームの変化のさせ方は、従来のカウンター志向にポゼッション風味も加えようとしているレアル・マドリーや、バイエルンの方向性とは逆で、ちょうどバルセロナの方向と一緒である。

 

数年前、ポゼッションの代名詞であったバルセロナは、ご存じのとおり現在MSNトリオのカウンター志向の強いチームへと変貌しつつある。

 

じゃが、カウンター風味を加えることは実はそうそう簡単なことではない。

 

わしが以前から言っているように、カウンターチームはよりカウンター色の濃いチームに弱く、あしたのジョーのようにクロスカウンターのカウンターを食らってやられてしまうのに似た、弱みを持つことになるからである。

 

この日のアーセナルも、下位のサウサンプトンに0-4で負けてしまった。

 

カウンターチームの弱みとは、一言でいうと、これは以前も書いたことじゃが、攻撃時に陣形が間延びしてしまうことにある。

 

鋭いFWによるカウンターは、それで決めきってしまえば問題ないのじゃが、決めきれずに守備に回った瞬間、どうなっているのじゃろうか?鋭いFWの攻撃が、鋭ければ鋭いほど、中盤、ディフェンスもそれについてゆくことができず、陣形は見事に間延びしてしまう。

 

サウサンプトンには、荒削りながらスピードのある選手がかなりいて、見事にカウンター志向のアーセナルに、逆カウンターをかまし、粉砕してしまった。アーセナルは炎上し、まる焦げになった。

 

アーセナル側にも当然スピードのある選手はそろっているのじゃが、彼らにパスを供給するエジルが封じられてしまうと、チャンスを作ることが出来なかったのじゃ。

 

☆     ☆     ☆

 

さて、ここで幾つかのことを考える必要な点がある。

 

現在、世界で覇権を争うチームは、かなり雰囲気が似て来ていて、主導権を握れる力を有しつつもカウンターも切れる、そういうチーム作りが多くの現場で行われている。

逆に、カウンターも切れるが、主導権も握れるように変化させようとしている。

 

ウィンが―もしくはトップに、ディフェンダーをぶっちぎってしまえる能力のある選手がかなりいる。

 

逆に言うと、スピードのある選手がいないチームは、効率的に決定的なチャンスが作りにくい趨勢になっている。

 

考えるべき一つの点は、日本もこのスピードのあるタレントをうまく使えるようにならないといけないのではないか?ということだ。日本人にもかつて、そして現在もスピードのある選手はかなりいた。しかし野人岡野をはじめとして、こういうタイプがあまり大成したことがない。

 

これは、本人にも原因があるのじゃろうが、彼を使う中盤や監督にもアイディアが不足している可能性が高い、とわしは睨んでいて、結構なんどもブログに書いている。

 

(この悩みは、オヤックスにも当てはまる。うちにはKMまっしぐらという快速フォワードがいるのじゃが、彼をうまく活かせないゲームというのが結構あるのである。ま、それはまた考えることとしよう)

 

スピードのある選手というのは、まず優先的に欧州のクラブチームで使わているという現状があるにもかかわらず、日本ではまだまだこの手の選手を活かすアイディアが不足している(一言でいえばカウンター下手)、というのが考えるべき一つの点である。

 

そもそも、Jリーグ特に、J1では、この「スピードのある選手を育成しよう」という気があるのじゃろうか?わしには、あんまりない気がする。高校生には、この手のウィンガ―を多く見かけるが、プロでは通用しないのか、通用するように育成するつもりがないのかと言ったばあり、わしは後者である気がしてならない。

 

もうちょっと、スピードがあるということの素晴らしさを認識したほうが良いのじゃなないのかな?

 

☆     ☆     ☆

 

次は、快速フォワードと香川タイプの組み合わせという流行についてである。アーセナルでは、この香川タイプをエジル(オジルじゃないよ)がやっているわけである。密集のなかで狭いスペースでもプレイが出来、ターンし、ちょっとしたドリブルをしかけ、周囲にパスも出せ、自らもゴールを狙える。

 

世界は、実は、スピードタイプだけでは勝ちきれないことも知っているのである。

 

世界標準のなかにおける日本人に期待されている役割というのが、見えてくる。

 

次は、カウンターとポゼッションのバランスをとるとして、どうやって守るのか?という点である。

 

☆     ☆     ☆

 

これは、実は世界中の監督が現在悩んているはずのことで、そんなものが分かっていたら、きっとわしも欧州から電話がかかってくることじゃろう。

 

なので、とても正解を書けるわけではないのであるが、ここでは一つだけ、バルセロナインサイドハーフ、ラキシッチケースを見てみよう。

 

ご存じのとおり、バルセロナは4-3-3システムで、守備にはあまり向かない。アンカーであるブスケツの左右はスペースができやすく、必ずこのシステムの弱点となる。先日、ラージョにやられていたレアルもクロースの左右を使われ、カウンターを浴び、みるまに逆転されていた。

 

以前のペップ-シャビはどうしていたかというと、簡単に言えば、ここで圧倒的なボール支配をしていたわけで、要はボールを取られるようなことをせず、攻撃し続けていた、ポゼッションをしていたわである。でも、ときどきやられそうになるとき、シャビは何をやっていたかというと、一番嫌らしいパスコースだけ切っていたのである。

 

じゃが、エンリケ-ラキシッチはそうではない。だいたいエンリケはラキシッチにさらなる試練を与えた。この右サイドにメッシを置いた(戻した)のじゃ。

 

メッシも、バルセロナ育ちであるので、周囲との連携が下手ということはまったくない。じゃが、他方で彼は王様でもあるので、ポジショニングはかなり自由である。つまり、ボールに触りたくなると下がってくるのである。しかも、守備はあまりしない。やるときはやるが、やらないときはまったくやらない。気まぐれであり、試合が始まってみないとわからない(多分、本人にも)。

 

シャビ以外、チアゴ・アルカンタラも、ラフィーニャも、セルジ・ロベルトもこの自由なポジションのメッシさんには頭を痛めた(セスクはかなりうまくやっていた)。

 

メッシが下りてくるとポジションが被ってしまう。ポジションが近くなり良いこともある。この右サイドで数的優位をつくりだしショートパスで崩すのか?と思っていると、しかし、メッシさんはどんどん一人でドリブルをしかけてしまう。次第に、邪魔だお前!的な扱いを受ける。うう!おいらをどこへ行ったら良いのじゃろう・・・これでみんな悩んでしまった。

 

しかも、右サイドにはダニ・アウベスさんがいる。このお方も攻撃を宿命づけられた御方で、ふと気が付くと、がんがんドリブルであがっていってしまう。下手をすると、右サイドは全員が攻めあがってしまう。まぁまるでオヤックスのようなってしまうわけである。

 

このエンリケバルセロナの右サイドで守備のバランスをとるのは難しい。多分、世界でも有数の難しさである。しかも、メッシさんも、アウベスさんも、結構奪われるじゃないですか!

 

実際、ラキシッチも最初は混乱していた。メッシ、アウベスとポジションが被り、効果的な攻撃も、守備の安定ももたらすことが出来なくなっていて、居心地悪そうな試合もあった。

 

じゃが、それもすぐに解消される。

 

まず、メッシが下がって来たときには、彼はスアレスの横、フォワードの位置にいて、身体の大きさを使ってポストに入るとこがある。メッシはドリブルをしたい人であるし、スペースを与えた方が気持ちよくプレーができることを察知して、彼はメッシと上下を入れ替わることを考えたのじゃ。

 

この場合、守備はアウベス、メッシ、ブスケツに任せることになるが、こういう思い切ったポジショングはすごい。新入りの癖に、守備は皆さんに任せた、というポジショニングである。

 

次に、アウベスさんが上がりたそうな雰囲気を漂わせている場合では、ラキシッチは守備のことを考え、ちゃんとアウベス、メッシの下で控え、彼らの攻撃を支えている。

 

このような場合では攻撃時でも、ラキシッチのポジジョンは、守備に非常に気をつかった位置であることが多い。具体的にはサイドから相手に突破されることをケアしているケースがかなり見られる。つまり、アウベスと役割を交代しているのじゃ。

 

そして、カウンターを浴びたとには体を張る。シャビとは異なり、パスコースを消すだけでなく、身体をぶつけ相手をサイドラインへ追い出す。パスの出所にアタックをかける。

 

バルセロナの中盤の選手としてはスピードのあるタイプで、ペナルティエリアまで戻って守備している姿もよく見かける。

 

そう。ラキシッチは、身体の大きさとハードワークで、シャビとは全くことなるポジショニングでバルセロナに適応したのじゃ。

 

また、現在のカウンター志向を強めたバルセロナは、この身体が張れ、守備にハードワークできるラキシッチがいるからこそ、成立している可能性がある。

 

カウンターのカウンターを浴びたときに、ラキシッチであれば最初のパスの出所、収まりどころをつぶせるからである。

 

☆     ☆      ☆

 

さて、まとめよう。

 

守備というとどうしても戦術論に陥りがちであるが、こうしてみてくると、選手の個性と強くかかわってくることが分かる。

 

しかも、サッカーにおける攻撃と守備は、コインの裏表であり、つねにコインはくるくると回転している。

 

選手個々の攻撃の特性、守備の特性が、局面の変化とともに、現れたと思っては消え、消えては現れる。

 

目もくらむようで、美しい。

 

☆     ☆      ☆

 

そうそう。わしは先日、『サッカー守備戦術の教科書』という本を買った。これを片手に、欧州リーグを見るとなかなか楽しい。

 

じゃが、本として出来が良いかというと、まぁ60点くらいではないかと思う。

 

目の付け所は100点であったのじゃが、まとめ方は雑誌の記事を少しずつ継ぎ足したようなものにとどまっており、もったいない。一言で言うと、「体系化」というものが出来ていない。

 

現場の監督の仕事というのは、教科書に沿って基本1から2というように進めるトルシエのような人と、チームの課題を探り出し変更を加えようとするアギーレのようなタイプがいると思うのであるが、この著者がいうように、日本のプロサッカーが充分にゾーンディフェンスを学んでいないということが本当であるのなら、トルシエ形のように基本1、2、3と説明すべきことが望まれる。

 

だが、本の形式は、現場主義、問題修正主義なのである。

 

続編が期待される。

 

今夜はまじめだったなぁ・・・・